都市の利便性から新しい生活様式へ
そもそも、主要な都市や街は、通常、山谷や大きな河川がない平坦な土地に発展してきました。逆に、地方には豊かな自然が残されています。
山谷や川は、レジャーとして一時的に訪れるからこそストレス解消になりますが、日常的な経済活動やインフラ整備においては、むしろ障害となりがちです。そのため、建設や交通インフラのコストが抑えられ、労働力も確保しやすい平坦で便利な場所が、古来より都市づくりに選ばれてきたのは当然と言えます。
このような利便性から、活力を求める若者を中心に都市への人口集中が進み、「職住近接」がもてはやされ、共働きのダブルインカムでタワーマンションに住むといったライフスタイルが謳歌されてきました。
しかし、近年、この状況に変化の兆しが見え始めています。ご存じのように、コロナ禍を経て、過度な人口密集を避ける傾向が強まりました。そして、デジタル技術の発達によって、自宅にいながらも快適に仕事ができる環境が整ったのです。
テレワークが普及すれば、「職住近接」に拘る必要
山谷や川があっても、道の平坦さがなくても、生活の質の配分を重視できるようになります。一度この働き方を経験すると、わずか5分や10分の通勤でも身支度などを含めると大きな時間の浪費であることに気づきます。
一方で、在宅勤務では仕事の成果や成果物が重要視されるため、サボっていないかを管理するような逆リモートの監視は、ナンセンスな管理手法となり得ます。
成果を出し続けられる優秀な人材であれば、週休3日制のような柔軟な働き方を認める企業こそが人気を集めます。このような成果主義と柔軟な働き方が主流になれば、デジタルリテラシーの高い若者から順に、都合の良い良質な仕事から埋まっていくでしょう。
まさに私たちは、これまでの常識が揺らぎ、「いつ何が起こるか分からない不安」と、「新しい働き方が定着しつつある確かな感触」が同居する、過渡期に立たされていると言えます。


















